木星の衛星の一つであるエウロパには、海と大気があると言われています。
そのため、生命体が存在する可能性があります。
2025年時点で探査機クリッパーがエウロパに向かっており、今後どんなデータが送られてくるのか、非常に楽しみです。
この記事では、そんなエウロパについてご紹介します。
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木星の衛星エウロパとは
エウロパは木星の衛星の一つです。
主成分はケイ酸塩岩石で、組成は地球型惑星に似ています。
1610年1月に、ガリレオ・ガリレイによってイオ、ガニメデ、カリストとあわせて発見されました。
ギリシア神話に登場するゼウスが恋した王女エウローペーにちなんで名づけられた天体で、比較的明るいため双眼鏡でも観察できます。
エウロパの特徴は、山脈やクレーターなどの大規模な地形がないこと。
太陽系の天体の中で最も滑らかな表面を持つと言われています。
ただし、赤道付近には15mほどの氷の尖塔が存在。
これは太陽光によって溶けた氷が垂直方向の割れ目を形成したことによるものです。
エウロパの大きさ
エウロパの直径は約3,100 km。
エウロパは月よりわずかに小さいのですが、太陽系内の衛星では6番目の大きさをほこります。
また太陽系内の全天体の中では15番目の大きさです。
赤道面での直径 | 3,202.739 ± 0.009 km |
表面積 | 3.090 ×107 km2 |
質量 | 4.800 ×1022 kg |
木星の周りを3日半かけて公転しており、軌道離心率はわずか0.009、
つまり、ほぼ円軌道で周っていることになります。
なおかつ、常に同じ面を木星に向けています。(木星の赤道面に対する軌道傾斜角は0.470° )
エウロパ表面の模様
エウロパの表面には、縦横に走る無数の割れ目模様があります。
大きいものになると幅が20km以上もあり、ほとんどは暗く曖昧な外縁と明るい物質からなる中央の帯で構成されています。
これは線条と呼ばれているもの。
割れ目の両側の地殻は相対的に動いているようで、地殻が広がることで割れ目に沿って温かい氷の噴火が起きることによって形成されると考えられています。
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エウロパの大気
1995年、ハッブル宇宙望遠鏡の高分散分光器を用いてエウロパが観測されました。
この時の観測結果によって、エウロパには大気があることが判明。
しかもその主成分は酸素分子 (O2)でした。
ただし、地球のように植物の光合成によって生み出される酸素ではなく、放射線分解によって形成されたもの。
同時に形成される水素分子は軽いのでエウロパの重力から脱出しますが、酸素分子は重いため、エウロパの表面にとどまっているのです。
また、大気の表面圧力は 0.1µPaしかなく、地球と比べて非常に希薄。(地球の大気圧の 10-12 倍)
当然、人間が呼吸できるような環境ではありません。
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エウロパには海がある
*出典:NASA/JPL-Caltech
エウロパの表面は、10〜30kmから固い氷の地殻でできています。
さらにその下には、比較的温かい氷の層があると言われており、これらを合わせた氷の厚さは約100kmです。
では、その氷の下には何があるのか?
現時点では、極めて高い確率で液体の海があるとされています。
これについては、エウロパ内部の質量分布に非対称性があることと、地下の液体の層によって氷地殻と内部の岩石部分が分離されていることが根拠となっています。
この海の体積は推定3×1018m3 。
実に地球の海の体積の2〜3倍に相当します。
また、エウロパが誘導磁場を持っていることから、内部に電気伝導率の高い物質、すなわち塩分があると思われます。
よって、エウロパの海は地球と同じようにしょっぱいはずです。
その他、エウロパの海の遊離酸素濃度は地球の深海に匹敵すると考えられています。
これは、表面にとどまった酸素が海に沈み込んだからだと思われます。
エウロパの海には潮汐がある
エウロパは木星の軌道を周っていますが、木星との距離は一定ではなく、引力も変化します。
そのため、エウロパの海には潮汐が発生しています。
潮汐があるということは、熱が発生しているということ。
そのおかげで海は凍らずに液体の状態を保っているようです。
ちなみに、地球で生命が誕生したのは、月からの引力で海に潮汐が発生しているから。
生命の誕生に潮汐は非常に重要であり、それがあるエウロパには生命体の存在が期待されます。
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エウロパの水中には生命体がいるかもしれない
エウロパの表面の平均温度は、赤道付近で‐160℃、極域では‐220℃です。
さらに、表面における放射線の水準は、1日あたり5,400mSv。
この放射線量は、たった一日で人間が死亡または重大な疾患を患うほどのレベルです。
地球外生命体が人間に似た肉体を持っているとは限りませんが、この気温と放射線量は生命体にとってとても過酷です。
しかしながら、エウロパの海の中となれば話は別。
エウロパ内部の海は、地球の南極大陸にある氷底湖(ボストーク湖)に近い環境であると推測されています。
また、地球での海底探査によって、一部の生物は太陽光無しでも繁殖し、特殊な食物連鎖を形成できることが判明しました。
これはつまり、エウロパの水中に何らかの生命体が存在している可能性があるということ。
事実、多くの学者や研究機関が、「エウロパは生命が存在する可能性が最も高い場所の一つ」と考えています。
エウロパの海水のサンプルから生命体が見つかるかもしれない
2012年、ハッブル宇宙望遠鏡がエウロパの様子を撮影しました。
そこには、エウロパの南極付近から噴出する水蒸気らしきものが写っており、海水の一部だと思います。
しかもその水蒸気らしきものは、表面から200kmの高さまで上がっているとのこと。
そのため、タイミングよく探査機が通過すれば、海水のサンプルが採取できるかもしれません。
仮にエウロパに微生物がいるとすれば、このサンプルに含まれている可能性が大。
後述しますが、エウロパに向かっている探査機は、表面から200km以内のところをフライバイする予定であり、海水のサンプル入手は決して夢物語ではないのです。
表面には地球由来の生命体がいる可能性もある
エウロパの表面の氷からは、粘土鉱物であるフィロケイ酸塩が検出されています。
フィロケイ酸塩は、地球上では有機物に伴って存在していることが多い物質です。
ということは、有機物を含む小惑星か彗星がエウロパに衝突した可能性があるということ。
そのため、一部の科学者は、「地球上の生命が小惑星の衝突によって宇宙空間に吹き飛ばされ、それが木星の衛星に到達した可能性がある」と主張しています。
実際、地球に衝突する可能性がある小惑星から生命の誕生に必要なアミノ酸が見つかっているので、物質が小惑星や彗星を介して天体間を移動するというのは十分にあり得る話です。
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探査機クリッパーがエウロパに向かっている
*出典:NASA/JPL-Caltech
2024年10月、NASAはスペースX社のロケットを使用して、探査機「エウロパ・クリッパー」を打ち上げました。
順調にいけば、エウロパ・クリッパーは2030年4月に木星系に到着。
その後、2031年から4年間かけてエウロパへの接近飛行を49回実施する予定です。
この時のエウロパからの高度は約25km。
前述したように、エウロパの海水は上空200kmまで噴きあがっているので、サンプルを採取できる可能性は十分にあります。
もっとも、探査機エウロパ・クリッパーのミッションは、エウロパの居住可能性を評価することと、今後打ち上げられる予定の探査機エウロパ・ランダーが着陸できる地点を探すこと。
地球外生命体を探しているわけではないので、海水のサンプルの採取はエウロパ・ランダーの仕事となるはず。
または、今後エウロパ・クリッパーに合流予定の探査機「ジュース(Juice)」が成し遂げるかもしれません。
ちなみに、ジュースは2023年にESAが打ち上げた探査機。
エウロパを含め、木星の衛星に生命が存在できる環境があるかどうかを調べることをミッションとしています。
これまでにエウロパに接近した探査機
実のところ、これまでにエウロパに接近した探査機は複数あります。
エウロパの探査が初めて行われたのは1973年のこと。
パイオニア10号が木星をフライバイし、その際にエウロパの接近画像が撮影されています。
続く1974年には、パイオニア11号もエウロパの接近画像を撮影。
しかし、どちらも解像度が低く、エウロパの様子を詳しく知ることはできませんでした。
1979年、木星系を探査したボイジャー1号と2号がエウロパを撮影。
この写真によって、エウロパの表面が氷に覆われていると考えられるようになり、同時に、地下に海が存在する可能性が浮上しました。
なお、ボイジャー2号は2018年11月5日に太陽圏を離脱し、恒星間空間に達しています。
1995年から2003年には、探査機ガリレオが木星を周回。
このミッションではエウロパへ接近観測も複数回行われました。
さらに2007年には、冥王星へ向かう途中の探査機ニュー・ホライズンズが木星系を通過し、エウロパの観測を行っています。
このように、エウロパは複数の探査機によって観測されているので、着陸こそしていないものの、氷の下に海が存在していることは確実視されています。
ちなみに、探査機によるエウロパ着陸は非常に困難。
これは木星が地球の約2万倍という強い磁場を持っており、それにより電子機器が故障してしまうおそれがあるからです。
まとめ
この記事では、木星の衛星エウロパについてご紹介しました。
エウロパの表面は非常に寒く、放射線が強いため、人類に似た生命体が存在しているとは思えません。
しかしながら、氷の層の下には海があり、潮汐もあることから、水中に何らかの生命体がいる可能性はあります。
これについては、今後エウロパに到着予定の探査機エウロパ・クリッパーやエウロパ・ランダー、ジュースなどが解き明かしてくれることでしょう。
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